四日目のつづきです。
『野営工作コンテスト』
今回の夏期野営の特徴は、初日から『開拓作業』という時間を設け、じっくりと班サイトを快適にするための開拓作業をやってもらったことですが、その中でも醍醐味は豊富な縛材を借りて作ることができた「野営工作」(枝や竹とロープワークでキャンプ道具を製作すること)については、各班みな非常に個性的な野営工作が数々誕生しました。(普通のキャンプ場ですと、縛材に使う枝や竹の入手も難しく、立ちかまどぐらいしか作れないのが今のスカウト達を取り巻く厳しい現実です。)
この日はそれら全作品を皆で見て回り、製作者がアピールを行い、コンテスト形式で表彰を行うことにしました。
審査員を務めたリーダー陣は、「実用性」「技術レベル」「夢とロマン」という三つの基準で作品をじっくり評価しました。優秀な作品が多くリーダーも大いに悩みましたが、スカウト達からの意見も聞き、以下のように表彰しました。
優勝・・・・・ドラゴン班 「反射炉」 by K 班長
優秀賞・・・イーグル班 「システムキッチン」 by I 班長+Wスカウト
特別賞・・・タイガー班 「食器乾燥棚」 by S 班長
それでは、全作品を以下ご紹介いたします。
【タイガー班】
「立ちかまど」
これは市内で行う一泊キャンプでも必ず製作するようにさせている工作物ですが、同じような縛材を支給しているのに、各班それぞれ個性が出ていて面白いです。
「物干し」
「キッチン」
写真は実際に使っている様子です。
このキッチンもまた、今までの野営では作れず今回初めて製作者があらわれた画期的な工作物です。
「食器乾燥棚」
「食器乾燥棚」+拡張機能 特別賞(実用性)受賞作品!!
3月の『パイオニアリングアドベンチャー』で製作したS 班長が再度製作に成功しました。実用性もバツグンのようで、3日前夜から参戦したW 次長が拡張機能をつけ加えてさらに実用性がパワーアップしていました。
「薪置き場」
「班旗立て」
「ごみ袋ホルダー」
【イーグル班】
「立ちかまど」
「衣類乾燥棚」
「工具置き場」
「水缶台」
「ごみ袋ホルダー」
「班旗立て 兼 ゲート」
「靴置き場」
「システムキッチン」 優秀賞受賞作品!!
この作品は、洗い場を作ったI 班長と、棚を作ったW スカウトの作品を合体させたアイデア作品です。
洗った後水が流れるしかけの製作に成功したのもアッパレですし、炊事の際の実用性もなかなかのものです。
【ドラゴン班】
「立ちかまど」
「水缶台」
「食器乾燥棚」
「薪置き場」
「ごみ袋ホルダー」
「反射炉」 優勝作品!!!!
K 班長がついに執念で完成させてしまいました。「最強のかまど」として、野営工作ヒント集に紹介しましたが、その資料を作成した私も実物を見たのは初めてでした。他の班含めスカウト達からの評価も最も高かった工作物でした。かまどの火が中央に集中するため、実用性もかなりのものだったようです。
『ラストナイトバーベキュー』
夏期野営名物の「コンクジュース」で乾杯し、たらふく肉を食べました。
1900 班長会議
1930 『大営火』
各班からの実行委員会が主になって、最後の夜の大営火を行いました。
スカウト達は、下の写真のようなキャンドルライトの道を歩き、営火場へと入りました。
隊長から各班の班長へ火が分けられ、点火しました。
なかなか厳しくやった夏期野営でしたので、こういうひと時は本当に盛り上がるものです。
スカウト達の営火プログラムは構成もなかなかよくできており、とても面白いものでした。
夜話(ヤーン) by 隊長
「♪いざゆかん なつかしの夢のふるさと 那須の森~
今までのこの那須の森での野営生活はどうだったでしょうか。まさに「夢のさと」だったのではないでしょうか。
そしてこの那須の森から、多くの先輩スカウトたちが大いなる夢を抱き、この世の中のために貢献していきました。この那須の地を切り開いた開拓者たちも大いなる夢を抱き、原野だったこの土地を豊かにしていきました。
皆さんは「夢」を持っていますか?
23WSJの会場となった山口県が生んだ幕末の偉人・吉田松陰(よしだしょういん)先生の言葉に、
夢なき者に理想なし、理想なき者に計画なし、計画なき者に実行なし、実行なき者に成功なし。
ゆえに、夢なき者に成功なし。
とあります。
夢に大小はありません。どんなことだっていい、大いに夢を抱き、スカウトとして、本当の「平和の騎士」を目指して生きていこう。そしてこの「夢のふるさと」那須の森にまた帰ってこよう。」
とても感銘深い夜話でした…この時、スカウト達はどんな「夢」をいだいたのでしょうか…
営火後、私達は本館に移動し、講座室で那須野営場長のお話を聞かせていただきました。
場長の語ってくださったお話は、那須の与一のお話から、日本のボーイスカウト運動の歴史、また那須野営場がどういう風に誕生し、今日まで大切にされてきたか詳しく教えてくださったものでした。
戦後、「農地解放」が叫ばれ、那須でも多くの農地が地主から農民に解放される中で、那須野営場も農民に解放すべきだということが当時言われたのだそうです。しかし、これに対して三島通陽(みしまみちはる。ボーイスカウト日本連盟の礎を作った方々の偉人の一人であり、ボーイスカウトに那須野営場として自らの敷地を提供した三島家の方です)が、以下のように述べ、これが受け入れられて那須野営場は農地になることを免れ、今日まで野営場として残ることができたのだそうです。住宅地の真ん中になぜあのような鬱蒼とした豊かな森があるのか、ずっと抱いていた疑問が感動とともに晴れたのを覚えています。
実は、当団ボーイでも、つい最近栃木県を主に襲った甚大な水害の件で隊長がひどく心を痛め、「このような時に、私達ボーイスカウトは夏期野営をやるべきではないのではないか…」と副長陣に訴え、わたしたち指導者も夏期野営を予定通り実施すべきか、だいぶ悩み、議論をしました。
しかし、「戦争や、災害、さまざまなことが私達の周りにこれからも起こると思います。しかし、そのたびに皆がそれに掛かりきりになるのはどうでしょうか。誰かが希望を示してあげることも大切なのでは。確かイギリスのチャーチルは戦争下だからこそ、教育を大事にしたと思います。私達も、このような時だからこそ、被災者の方々の「希望」のためにも、この教育活動を続けねばならないのではないでしょうか。この夏期野営はレジャーじゃありません。大切な教育活動です。私達がいつか日本のボーイスカウト運動を託す大事な人間を育てようという大切な教育活動です。」という意見が出、計画を続行するに至っていましたので、上記のスライドが出たときには隊長と目が合い、「うん」と頷いたのを覚えています。
夏期野営四日目の夜、スカウト達にこのお話を聞いてもらうことができて本当によかったと思いました。
終了後は、班会議と、交互に入浴となりました。
入浴後、スカウト達には那須野営場本館にある私の大好きな一角を紹介しました。
そこには、すごいノッティングボード(様々なロープワークを額などに入れて飾るものでボーイ部門ではターゲットバッジのマスターを取る際に製作に挑戦します)や、パイオニリングのノッティングボードがありました。他にも「無名戦士(アンノウンソルジャー)」のお話の巨大レプリカなどなど、那須野営場ならではの展示品に、スカウト達はめいめいの好奇心、温度で見入っていました…。
次は、いよいよ夏期野営最終日です。
「夏期野営(5)」につづく
(記:ボーイ隊副長 加藤)