『富士特別野営2014』つづき
8/19(火) 大会6日目
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~一泊ハイキング、報告書作成
1330 「スカウトソング」
1430 スカウトフォーラム(II)
1630 「撤営について」
2000 大営火・閉会式
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まだベンチャースカウト達は「一泊ハイキング」のまっただ中にいました。
朝早くに昨夜のビバーク地を出発した彼らは、また指令書をもとに次々と山々を越え、課題をこなし、歩き続けました。最後はスタッフが拍手で迎える中、バックパックを背負った各班のスカウト達は山中野営場に入ってきました。
苦難を乗り越え、一泊ハイキングをやり遂げたスカウト達の顔は、達成感に満ちあふれ、男子も女子も関係なく皆たくましい顔つきになっており、班の結びつきも強くなったように見えました☆ 富士特別野営がなぜ仕上げとして最後にこの試練を彼らに与えるのか理解出来た気がしました。
夜の大営火・閉会式は、木々に囲まれた営火用の小さな広場で行われました。集合した後は、懐中電灯もつけず真っ暗闇の中で息を殺して待っていると、リーダーが火打石を使って小さな火を起こし、たきぎにぼおっと着火する神秘的な演出がありました。
私も知らないようなソングも多かったですが、「スカウトに知って欲しい」という願いがこめられているであろう素敵なソングがたくさん歌われました。大営火では、リーダーによる迫真の『ウィンガ・パキヤ』も行われた他、各班の出し物がとても面白かったです♪
閉会式では、今大会でテーマソング的に扱われた歴史ある 『年長隊富士野営の歌』が歌われました。
『年長隊富士野営の歌』 中村知 作詞作曲 (『スカウト歌集』より)
1. 時は真夏ここは 標高一千メータ
霊峰天にそびえ 五湖その影うつす
この力われらの メッカ 憧れの山中湖
水に山に鍛えん 年長隊富士野営
2. からまつの樹海 黒き火山礫(れき)の
林道 行けば鳥の 歌うその声静か
アザミ茂る丘に のぼる野営の煙
友よ 斧をふるえ われら やぐらを組まん
3. 裾野長く伸びて 雄大にして 遥か(はるか)
南アルプス連峰 かなた 雲間にうかぶ
されど 狭霧わけば 冷雨まじりてめぐる
ここの 気象こそは まこと野営の試練
4. ここに つどうわれら すべて一千有余
精鋭そろい きそう 天下のスカウト仲間
あした 富士を仰ぐ ゆうべ湖岸に歌い
語りあいし六日 永く 心にやどらん
そして最後は、富士特別野営で野営長を務めた膳師(ぜんし)日本連盟総コミッショナーによるヤーン(夜話)でした。さりげなく信仰心に触れるお話は心に響くものでした。そして、営火は最初に着火されてから、一度も火をいじることなくヤーンと共に自然に静かに終わりました。
(ボーイスカウト日本連盟フェイスブック投稿記事)
8/20(水)大会7日目(最終日)
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朝礼・スカウツオウン
撤営作業
1030 解散式
1100 希望者「富士登山」出発
1300 参加スカウト退場
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ついに最終日でした・・・。 朝は、山中野営場の本部の建物の屋上からキレイな富士山が見えました。
この日は、ベンチャースカウト達は班サイトの撤営を行い、返却時には野営場から借りた備品のチェックを受け、テントのたたみ方、工具の入れ方が悪ければ場長に直される厳しいものでした。私も場長のお手伝いをして、何張りもテントのたたみ直しをしました(^_^;)
解散式も終了し解散となりました。スカウト達はなごり惜しそうに仲間、野営場と別れを告げ、全国へ帰っていきました。東北、関東、中部、関西、四国、九州へと・・・。(富士登山挑戦プログラムの希望者達は、皆とは別に富士山へ向かいました。・・・・無事に登頂を果たしすばらしいご来光をおがめたそうです!) こうして富士特別野営は終了しました。
(ボーイスカウト日本連盟フェイスブック投稿記事)
しかし私にはまだ終わりではありませんでした。今回、富士特別野営に参加するにあたり、自らに課した課題がありました。それはボーイスカウトの誇る素晴らしい価値観である「ウッドクラフト(森林生活法)」について学んでくること」でした。参加する前にスタッフにはウッドクラフトに関する詳しい資料が配布され、その時点で非常に勉強になりました。ここで長々と書くのも良くないので(既に長いですが(・。・;)、「ウッドクラフトとは?」についてご紹介させて頂きます・・・
◇ウッドクラフト
英和辞典で”Woodcraft”をひくと、森林(山)の知識(特に狩猟についての)森林学、木彫り、木彫り術
という訳が出ています。
ところが実は、以上のものをふくめた、木の根のように張り巡らされた広範囲なものが
「森林生活法≒ウッドクラフト」なのです。
木樵法(伐採・きこり)もあれば測地法もあるし、追跡、忍び寄り、読図・方位判定、結索、縛材、
開拓術、架橋、動物、植物、鉱物、天文、野営法など、われわれが通常スカウト技術といっているもの
すべてを含み、スカウトとして手の及ばない高度の専門的技術まで含まれているのです。
ようするに”ウッドクラフト”というものは「野外生活法」なのです。
この野外生活を通じて指導者とスカウトのかかわりを持ち、プログラムの中で、またプログラムと
プログラムの間に、生活そのものの中に「エッセンス」として、この「ウッドクラフト」は重要です。
[富士特別野営2014 『指導者の手引き』より抜粋]
◇スカウティングは、ウッドクラフトを通じての公民教育である。
模範的なスカウト生活というものは、ウッドクラフトという横糸を”ちかいとやくそく(おきて)”という縦糸に
織り込むことによって達成される。この戸外生活の基礎がなければスカウティングは空転に過ぎなくなる。
スカウトとして登録しておりながら、一度も戸外活動をしていない者もある。
彼らにとっては、野営は閉ざされた本である。コミッショナーや指導者の訓練によって、
そのような良くない隊はだんだんとなくなるであろう。どんな場合にも、戸外生活というのものが
中心にならなければならない。戸外生活者になりうるためには、われわれが目にする世界に触れ、
親しむことを望むことになる・・・・・・・・・・
[富士特別野営2014 『指導者の手引き 資料編』より抜粋]
私にとっては実に幸いなことに、今回の富士特別野営の舞台だった山中野営場の場長は「ミスターウッドクラフト」と呼ばれている御仁で、この方から、ウッドクラフトを学ぶのに良い本(ほとんどが海外の書籍でしたが)を色々教わることが出来ました。
・”ちーやん”こと中村知氏(※)が1960年代後半~1970年代のどこかで、
日本連盟の雑誌(『スカウティング』?)に載せたウッドクラフトに関する記事。今回の富士特別野営の
スタッフ用資料として一部配布されたものの元ネタ。この日、野営場の本棚を探すも見つからず!
※ 日本連盟の黎明期から戦後活躍された指導者。「スカウティング・フォア・ボーイズ」等の翻訳も手がけた。
・"Camping"(Horace Kephart著)
・"Woodcraft"(Horace Kephart著)
・"Scout Pioneering"(John Sweet著)
・パイオニアリング関係を勉強したいなら、アメリカ連盟よりカナダ連盟とかの方が良い。
などなど・・・
今回参加した富士特別野営、日本全国から各分野の最高のスタッフが集まっていましたので、まだまだ未熟者の私はあまりお役に立てずはがゆい思いをしましたが、とても勉強になりましたし、全国の素敵な方達とたくさんお友達になることが出来ました。 スカウトにとっては、全国からの素敵な仲間と出会えるし、真のスカウトとして日本連盟がスカウトたちに知って欲しいこと、体験して欲しいことを最高のスタッフのもとで学べ、体験出来る訳ですから、大変貴重な機会だと思います。
富士特別野営はある厳しい条件を満たしたベンチャースカウトを対象としています。特にスカウトの自主性が重んじられることになるベンチャースカウト部門に対し、今回の富士特別野営のスタイルはむしろボーイスカウト部門的な内容であり、いろいろ違和感を感じる方々もおられるかもしれません。しかし、 実際に参加してみて、あらためて今回の大会にこめられた日本連盟の以下の想いを強く感じた次第でした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 『富士特別野営2014』 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
◆ 奥島大会長の言葉
・ 富士特別野営の狙いは、「スカウティングの基本である野外活動を通じた人格形成」のための方法を
正確に次世代へ受け継いでゆくこと。
・ ノスタルジックなキャンプスタイルを再現するのではなく、野営生活を通じて「人と人との信頼関係」を
しっかり形成すること。
・ 単なるイベントではなく、野外活動の中で培われる相互の信頼関係のもとで、各自が「人間的な成長」
を実感出来ること。
・ 「冒険心、忍耐力、集中力、創意工夫、相互信頼の絆」を鍛え、「ちかい」と「おきて」の実践が
より強められること。
・高度なプログラムによって形成される人間の絆から生まれるものだということを実感すること。
・スカウト活動の基本としての野外活動と班制教育の重要性を再認識し、スカウトがスカウトらしく行動
するためには、パトロールのチームワークによって鍛えられること、ワン フォア オール オール フォア ワン
行動することの大切さの認識を深めること。
・ 「富士特別野営」を通じ、スカウト魂をしっかり身につけさせること。
◆ 大会の目的
スカウト運動の基本である野外活動(野営)を通じて、その重要性を認識し、班制教育を通じての
「教わること」「学ぶこと」を再確認する。プログラムとしての試練を乗り越える体験の中から、
信頼・絆の大切さと、友情を育み、スカウトスピリッツ(徳性、忍耐力、気力、清貧)を実践する。
◆ 大会の狙い
(1) 富士章取得者または目指すものが参加する名誉ある野営大会とする。
(2) 本格的な野営、ウッドクラフトを体験する。
(3) チームワーク、スカウト技能・知識、体力で乗り越えていくもので、躍動的で系統的な活動プログラムを
設定する。実施にあたっては参加スカウトに対し、プログラム実施面での安易な妥協はしない。
(4) 山中野営場の特色を生かした場外種目を設定する。
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今回の富士特別野営には、埼玉県連盟からスカウト・リーダー共に参加者がおらず大変残念でしたので、ぜひ次回は一人でも多くの埼玉の人間があの世界に触れて頂きたいなと強く願う次第です。私としては、この富士特別野営で学んだたくさんのことを、さらに学び続けるだけでなく、9月から担当しているボーイ隊の活動に活かして素敵なスカウト活動にするお手伝いをさせて頂きたいと思っています。
ここまで五回に分けて、長々とお付き合い頂き有難うございました!
大会の様子をYoutubeの動画で見れます!
以上
(記: 元ローバー隊長 加藤)